福祉業界の退職金制度 "はぐくみ基金" とは?メリット・デメリットを解説
みなさんは、福祉はぐくみ企業年金基金(はぐくみ基金)というワードを聞いたことはありますでしょうか?
はぐくみ基金とは、2018年4月に創設された新しい退職金制度です。
福祉事業所などが加入できる企業年金基金であり、従来の制度とは異なる優れた仕組みとなっています。
少しずつ認知度が上がっており、メリットの大きい優れた退職金制度であると言えるでしょう。
1. 福祉はぐくみ企業年金基金(はぐくみ基金)とは
福祉はぐくみ企業年金基金(はぐくみ基金)は、従業員自身が給与の一部を退職金掛金として拠出するかどうかを選択できる制度です。
給与のまま全額を受け取るか、給与の一部を拠出金として退職金に積み立てるかを、各々が自由に決められます。
拠出した掛金は元本が確保されており、運用益に応じて利息が付与されます。
つまり、将来の退職金がリスクなく増えていく仕組みになっているのです。
加入後1か月以上経過すれば、万が一早期退職となった場合でも、拠出済みの積立額の全額を受け取ることができます。
また、退職時だけでなく、育児や介護で一時的に休職する場合にも、積立金の一部または全部を受給することが可能です。
このように、はぐくみ基金は柔軟性が高く、様々なライフイベントに対応できる優れた退職金制度となっています。従業員一人ひとりのニーズに合わせて、手取り額を選択でき、万が一の際にも資金を受け取れるメリットがあります。
2. 会社・事業者にとってのメリット・デメリット
会社=事業者の視点から、福祉はぐくみ企業年金基金(はぐくみ基金)のメリット・デメリットを考えてみましょう。
メリット
- 従業員の満足度が向上し、優秀な人材の確保と定着に寄与します。
求人活動にも有利に働きます。 - 従業員が「給与」の一部を「退職金掛金」とした分については、法定福利費(社会保険料の事業主負担分)が軽減されます。
相当数の従業員がいる場合、その効果は大きくなります。
デメリット
やや運用コストがかかる点がデメリットとして挙げられますが、メリットの大きい制度であると言えます。
細かい注意点こそありますが、全体として見れば魅力的な退職金制度だと評価できるでしょう。
3. 従業員にとってのメリット・デメリット
従業員の視点から、福祉はぐくみ企業年金基金(はぐくみ基金)のメリット・デメリットを考えてみましょう。
メリット
- 社会保険料の軽減効果
従業員が給与の一部を「退職金掛金」として拠出した分については、社会保険料(健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険)の計算の対象から除外されます。
つまり、その分だけ従業員と事業主双方の社会保険料負担が軽減されるメリットがあります。
ただし、その分だけ将来受給する公的年金額が減少する点は注意が必要です。 - 所得税の大幅軽減効果
「退職金掛金」として拠出した分は、当年度の課税対象所得から除外されます。そのため、毎年支払う所得税の負担額が軽減されます。
さらに、実際に退職して掛金を一時金で受け取る際には、「退職所得」として広く優遇措置があります。
所得税の計算上、受取額の一部が控除されるなど、均等割合などの軽減措置がじられているため、通常の給与所得と比べて税負担がかなり軽くなる傾向にあります。
なお、勤務年数などによっては、一定額以下であれば所得税の負担が0円になる場合もあります。
このように、はぐくみ基金は社会保険料と所得税の双方で節税効果が期待でき、手取り額を有効に活用できる優れた制度であると言えます。
国税庁のリンク!
詳しい計算方法については、国税庁のホームページをご参照ください。
デメリット
退職金掛金として月々の給与から拠出されるため、毎月の手取り額は減ってしまいます。
日々の生活が困窮している場合は厳しいと感じることもあると思います。
ただし、長い目で見ると退職金として返ってくるため、大きなデメリットではないのではないかもしれません。
4. 他の退職金制度
福祉はぐくみ企業年金基金(はぐくみ基金)以外にも、企業が従業員向けに導入できる退職金制度はいくつか存在します。
- 確定拠出年金:企業型DCやiDeCoなど
- 中小企業退職金共済制度
これらの制度はそれぞれ異なる特徴を持っています。
確定拠出年金は個人型の年金で、従業員自身が掛金の運用方法を選択できます。
一方、中小企業退職金共済は国が運営する公的な共済制度です。
このように、各退職金制度にはメリットとデメリットがあり、企業の規模や事情に応じて得失が変わってきます。
そのため、複数の制度を比較検討し、自社に最適なものを選ぶことが重要になります。
適切な退職金制度を導入することで、従業員の安心感や会社への定着率が高まり、結果として企業価値の向上につながります。
くれぐれも制度選定は慎重に行う必要があるでしょう。
本記事を読んで興味が湧いた方は、福祉はぐくみ企業年金基金(はぐくみ基金)の公式サイトもご確認ください。